2006.04.1発行WIND FROM FUTURE Vol.13
2006.04.01発行
目次
■床下換気販促ツール・ラインナップ
■業界初「ハイブリッド・コントローラー」その仕組み
■いよいよ発売間近「ライフディフェンス2」
HISTORY OF S ~SEIHO小史~
第13回「組合に認めさせた例外」
会社の組合書記局では、私を管理職としてではなく組合の先輩として笑顔で迎えてくれた。
「いや、今日は会社側の人間として、ちょっと組合にお願いがあってなあ…」と、切り出した。
「今度長崎工場で雇うパートは、労使の協定では、十一月で期限が切れるが、すでに君たちの耳にも入っとると思うが、採用のときこちらから無理いってもどってきてもらうこともあってな、杓子定規にするわけにはいかんのだよ。特殊な例外として、年末まで一カ月だけ延長したいが、組合も了承してくれんやろうか。十一月より十二月の方が区切りも良いしね。なんならわしの独断でやったということにしてもろてもええよ」
「私たちもいきさつは聞いとります。大石さんの独断でやったことにして、組合は知らなかった、ということにしときましょう」
後輩の幹部は、すんなり聞いてくれた。
私は専務と事業部長に報告した。
専務は気が楽になったようだった。事業部長は、不安顔だった。
「大石君、十二月末になったらどうするんや。パートはおらんようになるんやぞ。一ヵ月時間を稼いだだけとちゃうか。本質はなにもかわっとりゃせんぞ」
「事業部長、問題は今起きようとしとるんでっせ。たとえ一ヵ月でも、お客様に迷惑をかけんように、わしらこうやって苦労しとるんじゃないですか。年末ぎりぎりまで頑張って、できるだけ多くの製品をあげて、それでもどうにもならんようになったら、そのときはそのときですよ。すべて大石の責任でやったことにして、わしを馘首にしたらええですやろ。
ここから逃げさせてもらいます。後は事業部長に任せまっさ
「おい、脅すなよ。わしは最近心臓が悪うなったよ。君のせいかも知れんな」
冗談めいた話で、その場は終わった。
ある日、仕事が片づいたところで、現場責任者を集めた。
「君たちは今から、手分けしてパートの家を回って勧誘してくれ」
私はこう言った。
「三ヵ月では来ませんよ」
彼らは動こうとしなかった。
「誰が三ヵ月と言った。わしが全責任をもつと言って集めてくれ」
九月から四十人近いパートがもどってきた。人員の入れ替えもスムーズに行われた。当面の危機は回避でき、ひと安心というところだった。
だが、先のことなど私にもわからなかった。
「大石が全責任をもつ」と言って集めたパートのことを思い、責任をひしひしと感じていた。